ヌメ革のお手入れクリーム比較~王道4種・代用品3種~
目次
革のお手入れ用クリームやオイルはどれがいいのか
そろそろ、革のお手入れもできるようになりましょうか。
調べたら、お手入れ用のクリームやオイルはいろいろあって迷っちゃう
代表的なものを買って比較してみようぜ。ついでに代用品も。
今回はヌメ革を用いて革のお手入れに使うクリームやオイルの比較実験をおこないました。
比較したのは、ミンクオイル、ピュアホースオイル、ニートフットオイル、皮革用クリーム。
家庭での代用品として、オリーブオイル、ハンドクリーム、そしてヴァセリンです。
比較実験の結果を記事にすることで、参考になれば幸いです。
結果まとめ~毎日1か月塗り続けた結果はいかに!1年後の様子も~
毎日一か月間塗り続け、その後1年放置したときの経時変化を以下の図でまとめました。
それぞれのクリーム・オイルにはそれぞれ違った良さがあったので、詳細は記事を読み進めてください。
注意点として、撮影の素人がコンパクトデジタルカメラで撮影したので、室内灯の光の当たり具合などの撮影条件をそろえてまで撮っていないです。そのため、毎日撮った画像を見比べてみたら明度や色味のばらつきが生じていました。
上記の比較写真を参考にする際も、実際の変化より正確な表現ではないことを考慮ください。
結論を先にいえば、革のお手入れクリームやオイルを塗った後、窓辺で保管して一年経過後に分かったことは
・色が濃くなった順は
ニートフットオイル ≒ オリーブオイル > ピュアホースオイル > ミンクオイル > ヴァセリン > コロニル1909 ≒ ニベア > なにもしない
・革が柔らかくなった順は
ピュアホースオイル > ニートフットオイル ≒ オリーブオイル > ミンクオイル > ヴァセリン ≒ コロニル1909 ≒ ニベア ≒ なにもしない
の順でした。
なぜお手入れが必要なの?
レザ-クラフトを始めてから、チラチラと気になりだしたのは『革のお手入れ』。
それまでは革製品のケアってたいして意識してなかったです。
でも、レザークラフトの調べ物をするうちに、よく次の文言が目に付くようになりました。
革は手入れが大事
革は手入れが大事
革は手入れが大事
「そんなに大事なら、初心者ながらレザークラフトを嗜む者として、お手入れをマスターしようじゃないか。」
と、勢い込んでみました。
しか~し、
「ネット上にはお手入れ用品の種類がいっぱいある・・・どれを使えばいいの?」
ネットには情報があふれていました。
そこで、とりあえず情報整理から手を付けることにしました。
まずは、情報整理①『なぜお手入れが必要なのか』
次に、情報整理②『 お手入れ用クリーム・オイルの目的 』
をまとめました。
情報整理①『なぜお手入れが必要なのか』
レザー製品は、日ごろのメンテナンスを怠らなければ10年くらいは使うことができるが、
さぼると、
汚れたまま放置すると
・変色する
・カビが生える
乾燥すると、
・艶がなくなる
・傷がつきやすくなる
・ひび割れが発生する
水に濡れたり湿気がこもると、
・シミになる
・水ぶくれのように表面が凸凹になってしまったりする
・乾いたときに部分的に硬化する
・カビが発生する
耐熱温度( 60〜100℃程度 )以上の高温に晒すと、
・硬化する
・変形する
といったトラブルが発生する。
「あちゃ~、どれも心当たりがあるわ。夏に革カバンを車内に置き忘れたり、冬に革ブーツについた雪を落とさないままストーブの前に置いて乾燥させたり。」
「…(-_-;)。我ながらひどい扱いだな。だから、一部分だけ色が変わってたり、ひび割れてたりするのか。反省します。」
上記の様なトラブルを起こさないためには、
・汚れをおとす
・油分を補って乾燥を防ぐ
・水分をつけない
・高温の場所に置かない
といったお手入れが必要です。
情報整理②『 お手入れ用クリーム・オイルの目的 』
日ごろから、汚れはブラシで落とし、水分はすぐ拭きとり、高温の場所には置かないようにする。
といったことはできそうだけど、「油分を補う」ってのをどうするのかという疑問がわきあがります。
この「油分を補う」ために使用するのが、革製品用のクリームやオイルです。
そのほかに副次的な効果として、
・撥水性を持たせる
・カビを抑制する
・経年変化(エイジング)のなかでも色合いの変化を促進させる
といった効果が期待できるクリームやオイルもある。
使用する頻度は、「革が乾燥してきたな」と感じたら塗るくらいで十分。逆に塗りすぎると、余分な油分を栄養としてカビが発生しやすくなるから注意が必要とのこと。
比較実験に用いたクリーム・オイル
今回比較実験に使用したのは以下のクリームやオイルです。
ネット上でよく目にする王道として
・ミンクオイル
・ピュアホースオイル
・ニートフットオイル
・皮革用クリーム( コロニル 1909シュプリームクリームデラックス )
家庭にある代用品として
・オリーブオイル
・ハンドクリーム(ニベア)
・リップクリーム(ヴァセリン)
番外編
・手の皮脂
・ブラシでブラッシング
これらのクリームやオイルを 革の小片に 2020年1月1日から1か月間にわたって毎日塗りました。
本来、クリーム・オイルは多くても1か月に一回塗るくらいの頻度で十分な量ですが、
過剰に塗った場合も知りたくて、毎日塗ってみました。
ちなみに、毎日塗る条件のほかに、月に1回塗る条件も比べる計画でしたが、
1か月やったら、この作業に飽きてしまい、ほったらかしにしました。
そのため、1か月ごとの経時変化観察の計画はご破算です。
「いやぁ~、3日坊主ならぬ1か月坊主って感じです。」
「あえて言い訳するなら、毎日塗ってたら各種クリーム・オイルの特徴が分かってきたので満足しちゃったんだよね。」
それでも、保管は続けた(ただの放置ともいう。)ので、2021年の1月に1年経過したのを機に、1年後の経年変化を比較してみました。
保管方法
比較実験には、10条件の革の小片19枚(なにもしない小片1枚、毎日塗布用9枚、および1か月毎塗布用の9枚)を2セット(小片計38枚)用意しました。
1セットは、ケースごと窓辺に置いて日光浴させながら保管。
もう1セットは、ケースごと紙箱の中に入れて遮光状態で保管しました。
ちなみに、実験環境は札幌で、
1月の室温は10度くらい、湿度は20%くらい の部屋で行いました。
(夏場は、最高室温35度くらいで湿度は80%くらいが1週間ほど)
「東京等の本州に比べたら、低温、低湿度、日射量も少ない環境なので、革の経時変化は小さいかもなぁ。」
比較実験の様子
それではこれから、ヌメ革を使って比較実験を行ったときの様子を紹介します。
条件1.何もしない
比較対象として、何もしないままの「塗布なし」革も用意しておきます。
イメージとしては、買ってきたまま使わずに保管している革を想定しています。
「そもそも、ヌメ革自体の経年変化も観察したいなぁ」
結果
注意:上記の比較写真の色の変化は、革自体の色の変化が小さかったため、それより撮影時の光の加減による変化が大きく影響してしまっているため、実物の色の変化をうまく表現できていないです。
何も塗らずに(「塗布なし」)保管方法だけ変えた場合の結果は、
・紙箱内で遮光保管したほうは、1年経過してもあまり色の変化はなく、元の白っぽいベージュ色のままでした。
・それに対して、光のあたる窓辺で保管したほうは、1年後には黄土色っぽい色になっていました。ただ、飴色といえるほどの色ではないです。
「革の醍醐味の一つのエイジングで飴色に成長させるというのは1年程度では、見られないようだね。」
条件2.手の皮脂
ネット上では、手の皮脂で触るだけでもお手入れできるとあったので、やってみました。
「ただ、冬場で手も乾燥しがちなので、あんまり期待できないだろうなぁ。」
結果
一年経過しても、「条件1.なにもしない」と変化が変わらなかったです。
しいて言えば、 色の変化もあまりないし、ひび割れもしていないし、カビも発生していないです。
「変化は分からなかったけど、1か月ナデナデして革の感触を味わうのは楽しかったな」
条件3.ブラシ
革のお手入れの中で基本の「き」だと言われている ブラッシングだけでも効果があるのかを知りたくて試してみました。
はじめに、ブラシをかける目的は
・ 革にある無数の毛穴に塵や埃・汚れなどをため込めないようにする
・ 革表面の繊維を整えて細かいキズを目立たなくする
・ 革表面の繊維を整えて艶を生む
この目的を果たすためには、ブラシの種類を選ぶ必要があって、
・毛質が柔らかい馬毛ブラシは、細かな埃落としに向く。
・逆に、毛質が固い豚毛ブラシは、艶出しに向く。
とのこと、今回の実験では馬毛ブラシを用いました。
結果
この方法も一年経過しても、「条件1.何もしない」と変化が変わらなかったです。
色の変化もあまりないし、 ひび割れもしていないし、カビも発生していないです。
「まぁ、埃を落としたくらいで目に見える変化は1年ではおきないのか。艶を出しを目的にして豚毛ブラシで試してみればよかったなぁ」
「ハッ、そういえば普段使っているヘアブラシは豚毛だったな。たしかにアレでブラッシングした後は髪がツヤツヤしているかも。髪に艶がでるなら、革にも艶がでるのかも。...どうだろう。」
条件4.ミンクオイル
革のお手入れ方法を検索すると、ミンクオイルというものが多くヒットしましたので、これも試してみました。
ミンクオイルとは、
ミンクというイタチ科の動物からとれる脂のことで、その他の成分として、ろう(パラフィン)や商品によってはワセリンが入っていることもあるオイル。
革にミンクオイルを塗る目的は、油分を補給することで、その結果として
・乾燥しにくくなる
・柔らかくなる
・撥水性が高まる
という効果が期待されるとのこと。
注意点として
塗りすぎるとカビが生えることがある
「ミンクってオコジョみたいな黒い動物でしょ。毛がフサフサで昔はコートのファーに使われていたアレか。」
塗ったときの感触
バターのような硬さのクリーム状なので、そのまま革に乗せたら薄く延ばせなくて部分的に厚塗り状態になってしまいました。
そこで、布ですくったクリームをいったん蓋の裏に少量を乗せてから、それを蓋の上で延ばしてから革に塗りました。この方法だと均一にぬれました。
結果
1か月間毎日塗ったら、
・元の生白いベージュ色からうっすら黄色味を帯びてきて少し黄土色に近づいた感じがした。
そのまま1年放置したら
・何もしない条件の革より茶色味が強い黄土色になった。
・革の硬さも何もしない条件の革より柔らくなっていた。
「何もしない革より、ミンクオイルを塗った革のほうがエイジングしてるので、革をケアしてる実感があるなぁ。」