後付けできる チェストベルト (改良版)の作り方
自作 チェストベルト を改良したい
こんにちは。みどりです。
今回のレザークラフトではリュックに取り付ける チェストベルト の改良版を作りました。 作ってみての反省点を記事にすることで、参考になれば幸いです。
自作の チェストベルト を使うようになってから、猫背が改善されつつあって嬉しいな。
そうね。でも、何箇所かは気になるところがあるわ
新しく改良版を作って、より便利にしようぜ。
これが完成品です。
そろそろ冬が近づいてきたので、フロントパネルに「雪の妖精シマエナガ」をレザーカービングであしらってみました。イラストのほかに構造的にも初版の チェストベルト からいくつか変更していますので、このあとの制作風景の中で説明していきます。
以前に チェストベルト を作った時の様子は以下記事にまとめています。興味のある方は合わせてどうぞ。
関連記事>>>後付けできる革製 チェストベルト の作り方~型紙公開~
制作意図
初版の チェストベルト と同様に、以下の機能を持つように作りました。
○ リュックに後付けできること
○ 様々なサイズのリュックの肩紐に対応すること
○ チェストベルト が肩紐からずり落ちないこと
○ 体形の変化に合わせて調節できること
○ バックルを外したときに、フロントパネルが垂直に垂れ下がること
○ おしゃれであること
○ 季節に合わせてフロントパネルの絵柄を変更できること
初版の チェストベルト から構造的に次の点を変えました。
〇 フロントパネルを垂直に垂れ下げるための方法を「切り込み」から「組ねじ」に変更
「きりこみ」方式だと裂けてきそうだと思ったので、「組ねじ」を使うことにしました。
〇 クリップつき游環の取り付け
チェストベルト を胸元で固定していないときに、フロントパネルがブラブラして見苦しいので
肩紐に固定できるようにクリップをつけました。
〇 フロントパネルの固定具を「バネホック」から「ギボシ」に変更
バネホックの存在感が大きいと思ったので、より小さいギボシに変えました。
〇 チェストベルト の開閉部品を「バックル」から「差し込み錠」に変更
バックルの大きく黒いプラスチック感が革製品に合わないなと思ったので、
金属製で小さい差し込み錠に変えました。
チェストベルト の構造説明
今回の改良版 チェストベルト はタンニン鞣しの革をベースとして、以下のイラストの様なパーツでできています。
〇 左側ベルト用パーツ:
リュックの左肩紐に装着するパーツで、部品としてギボシ&孔、D環、游環、そして差し込み錠(メス)を取り付けます。
〇 右側ベルト用パーツ(4部品):
リュックの右肩紐に装着するパーツで 4つの部品でできています。
・パーツ1: チェストベルト を開閉するための差し込み錠(オス)、クリップをつけた游環、
そしてパーツ2とつなげるための四角環
・パーツ2:ギボシを取り付けたフロントパネルを取り付ける土台部分、長さ調整のための移動環、
そして、パーツ3とつなげるための組ねじ
・パーツ3:組ねじ、長さ調整のための移動環、そしてパーツ4とつなげるための移動環
・パーツ4: 右肩紐に装着するためのギボシ&孔
〇 フロントパネルパーツ
レザーカービングで模様をあしらった部品で、ギボシから取り外すことで別の模様のフロントパネルに交換できるようにしています。
チェストベルト 制作の様子
それでは、制作の様子を紹介します。
部品制作
まずは、革から部品を作っていきます。
最初に、お絵かきソフトGimpで作った型紙をコピー用紙に印刷します。
それを革のオモテ面に置いて、それを磁石で固定します。
型紙の輪郭を目打ちを用いてなぞって革に傷をつけることで、型紙の輪郭を革に転写します。
この際、型紙に記した縫い孔の位置も目打ちを刺して革に転写します。
磁石をつかった型紙の固定方法は以下の記事にまとめています。興味のある方は合わせてどうぞ。
関連記事>>>楽に型紙を革に転写するレザークラフトの方法
その次に、転写した輪郭線にそって革包丁で革を裁断していきます。
切り出した部品のうち、肩紐に巻き付ける部品と、移動環を取り付ける部分は柔らかくしたいので、汚れ防止も兼ねてピュアホースオイルを塗ります。
ピュアホースオイルについては以下の記事で取り上げています。興味のある方は合わせてどうぞ。
関連記事>>>ヌメ革のお手入れクリーム比較~王道4種・代用品3種~
ピュアホースオイルが乾いたら、革に転写した縫い孔位置を目印に菱切りを刺して、平行四辺形の縫い孔を開けていきます。
その後に、それぞれの部品のコバを磨いておきます。
チェストベルト のパーツ制作
部品の準備がおわったら、次はその部品を使ってそれぞれのパーツにしていきます。
1.左側ベルト用パーツ
リュックの左側の肩紐にとりつける「左側ベルトパーツ」を作ります。
まずは、肩紐にとりつけるためのギボシを取り付けて、ギボシを留めるため孔を開けます。
孔をたくさんあけるので、写真のようなスクリューポンチを用いました。
「制作しているのは早朝で家族がまで寝ているから、あまりポンチをハンマーで打ち付ける方法はとりたくないなぁ。孔をたくさん開けるならスクリューポンチは静かで便利だね。」
スクリューポンチの使い心地は以下の記事にまとめています。興味のある方は合わせてどうぞ。
次に、四角環と差し込み錠(メス)を取り付けます。
以下の写真のような配置で、四角環と差し込み錠(メス)を革にとりつけたら、
差し込み錠の足をペンチを用いて折ります。
そして、四角環を起点に革を折って、差し込み錠の足を隠しながら固定します。
そのあとで差し込み錠の前後を糸で縫います。
これで、左側ベルト用パーツの出来上がりです。
2.右側ベルト用パーツ
右側ベルト用パーツ1の作成
次に右側ベルト用パーツの4つのパーツを作ります。
まずは、 チェストベルト を開閉させるための差し込み錠(オス)の土台となるパーツ1を作ります。
パーツ1の端に差し込み錠(オス)をカシメと打ち具、そしてハンマーを用いて土台となる革に固定します。このとき、革の小片をかませることで厚さ調整をします。
パーツ1のもう一端は四角環を取り付けてから折り返します。そして、接着剤(サイビノール600)で固定してから糸で縫い付けます。
これで右側ベルト用パーツ1の出来上がりです。
右側ベルト用パーツ2の作成
次に、フロントパネルの土台となる右側ベルト用パーツ2をつくります。
パーツ2はフロントパネルの土台となるため、フニャフニャだと使いづらいです。そのため、裏側に硬化剤(カタメール)を塗って、パリッとさせます。
ただし、移動環を取り付ける部分はすでにピュアホースオイルを塗って柔らかくしているので、その部分には硬化剤は塗らないです。
「初版の チェストベルト は使っているうちにフロントパネルの土台が少し曲がってきたからね、それを防ぐために硬化剤を使ってみるよ。」
そして、写真のように移動環を取り付けながら、パーツ1とつなげます。
移動環が外れない様に、パーツ2の一端は折り返してから縫い付けることでストッパーとします。
右側ベルト用パーツ3の作成
次に長さ調整のためのパーツ3を作ります。
パーツ2とパーツ3は「組ねじ」でつなぐので、組ねじを取り付ける孔を開けます。
「この部分に組ねじを使うことで、チェストベルトを開けたときに、フロントパネルが垂直に垂れ下げることができるよ。初版の「切り込み」方式よりだいぶスマートになるね。」
パーツ3のもう一端に写真のように移動環とパーツ4とつなぐための金具(移動環)を取り付けます。ここでも一端を折り返してストッパーとします。
「パーツ4とつなぐための金具は、四角環ではなくて移動環を使ってるよ。この移動環はパーツ4をつなぐ役割の他にパーツ4を肩紐に巻き付けるための役割も兼用させるためだよ。」
右側ベルト用パーツ4の作成
最後に、右肩紐にとりつけるためのパーツ4を先ほどのパーツ3につなぎます。
パーツ3の端の移動環の真ん中の柱にパーツ4を固定します。
これで、パーツ1からパーツ4までがつながりました。
このあとは細かい部分を作っていきます。
仕上げ
まずは、組ねじが外れないように、組ねじ同士は接合部を接着剤で接着しておきます。そのうえで、組ねじの上にカバーとなる革を被せて糸で固定します。
これで、接着剤が弱くて組ねじが外れた場合に、カバーによって組ねじがなくなることを防止するためです。
次に、肩紐にとりつけるベルトを押さえるための游環を作ります。
以下の写真のように細長い革をリング状にしたら、左側ベルト用パーツのギボシと差し込み錠(メス)の間に通します。
今度は、 チェストベルト を開いたときに、垂れ下がったベルトがブラブラしないように肩紐に留めるためのクリップ付き游環を作ります。
游環にハットクリップを糸で縫い付けてから、差し込み錠(オス)がある右側ベルト用パーツ1に通します。
最後に、仮止めしていたギボシを本固定します。
一度取り外して、ネジ部分に接着剤を受けてから、再度締め直して固定します。
ここまでで チェストベルト 本体は出来上がりです。
3.フロントパネルパーツ
絵柄をあしらうフロントパネルをつくります。
今回のフロントパネルには「シマエナガ」と「雪の結晶」をレザーカービングで彫ります。
まずは、濡らした革にイラストを置きます。
目打ちを用いてイラストの輪郭線をなぞって、イラストを革に転写します。
革をレンガの上に置いた状態で刻印をハンマーで打ち付けながら、革に凹凸をつけてイラストを浮き上がらせていきます。
「めちゃくちゃ細かいな。目がショボショボしちゃいそう。」
レザーカービングについては以下の記事にまとめています。興味のある方は合わせてどうぞ。
凹凸をつける作業が終わった、次はペースト染料を塗って陰影を強調します。
まずは、ペースト染料が浸み込んでほしくないイラストの枠部分にレザーコートを塗ります。
レザーコートが乾いたら、キッチンブラシを用いてペースト染料(アンティックダイ)を塗りこみます。
ペースト染料が乾く前に余分な染料を布切れで拭き取ります。
ペースト染料が乾いたら、色を付けていきます。
いつもはクラフト染料で染色しているのですが、今回はシマエナガの白色を表現するために顔料であるアクリル絵の具を用いて色付けしていきます。
「調べたら、染料では白色は存在しないみたいだね。顔料は初挑戦だよ。」
まずは、白色と青色アクリル絵の具を使用して、雪の結晶を色付けします。
次に、シマエナガの色付けをします。
足に黒色、羽に白色と茶色、そして瞳と嘴に黒色で色をつけます。
「最初は100円グッズの細筆を使ったんだけど、先端がすぐにバラバラになってイライラしたから、もう少しお金をだして、文房具売り場で売っているちゃんとした筆を買ったら、何回使っても先端がまとまったままですごく便利だったよ。筆は専用メーカーのものじゃないとな。」
染色が終わったら、乾いていることを確認して、上からレザーコートを塗って色落ちを防ぎます。
色付けが終わったら、フロントパネルを型紙の大きさに切り出します。
そして、 チェストベルト 本体に取り付けるために、両端にギボシを留める孔と切り込みをいれます。
フロントパネルを チェストベルト 本体に取り付けたら完成です。
「おお~いい感じだ。シマエナガと雪の結晶で冬って感じがでてるな。」
リュックを背負った直後のチェストベルトをまだ閉じていない状態では、
組ねじを軸としてフロントパネルが垂直に垂れさがる状態になります。
使用してみての感想
今はまだ秋なので、シマエナガを着けて出歩くには季節的にまだ早いかな。冬の楽しみだね。
チェストベルト 本体の機能としたら、使いやすいです。
クリップをつけたことで、肩紐に固定出来るようになってブラブラしなくなったし、
バックルから差し込み錠に変更しても、 チェストベルト の開閉するのに不都合はなかったです。
いろいろ反省点はあるけど、作ってよかったです。
おしまい。最後まで読んでくれてありがとう。